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  • Naoharu Motomura

数学は未来予測が苦手?

マーケッターたちに、意外と見落とされやすい数学の前提は「数学は未来予測が苦手」ということ。

過去の事象群を数字という世界共通言語で表現し、その事象を一定のルールのもとに、数的処理する作業が数学の本質であが、Amazonを筆頭にレコメンデーション機能を実装するサービスが隆盛しており、「数学は未来予測が苦手」という言葉にピンとこない方も多いだろう。


コメンデーション機能は、自分の中に眠る潜在的需要を刺激し、購入させるということから、後々に顕在化するであろう商品・サービスを提示し、顧客にアプローチしていることから、未来を予測した動きとも言える。


ただし、それはこの世に自分しかいなかった場合に限られる。


自分ひとりだけの世界であれば、自分以外に参考する情報がないため、レコメンデーション機能は人知を超えた何かを組み込んでおススメ商品を提示していることになり、それは完全に未来予測していることになるが、実際はただ単に似た者同士をグルーピングしているだけに過ぎない。そのグルーピングの精度や粒度が各社の極秘スパイスであり、売上貢献に大きく関係してくるのは間違いない。


もう一度お伝えするが、レコメンデーション機能はグルーピング化が実態なのだ。ここで、少し話を脱線する。


レコメンデーション機能が隆盛してきた背景にあるのは、200年以上に前にイギリス人のトーマス・ベイズ牧師(1701-1761)が発見し、彼の死後、リチャード・プライスによって1763年に発表された「ベイズの定理」がもとになっているということはご存じだろうか?

正確にいえば、「ベイズの定理」をもとにした「ベイズ統計学」である。200年以上という歳月もさることながら、牧師による発見ということのほうが驚きが大きく感じる方も多くいるだろう。


世界最古の哲学者アリストテレスも建築家で名声を上げていたこともあり、「万有引力の法則」を生み出したニュートンも本職は錬金術師だったりもし、昔の天才たちは群を抜いている。。。

その「ベイズの定理」が何故、200年以上も眠っていたのか?

それは「ベイズの定理」をもとにした演算処理を耐えきれるインフラが無かったからだ。もちろん、200年前に提唱された定理のため、当時は手計算で証明等を行っていたのだが、商業利用となると勝手が異なる。素早く、正確に、休みなく、大量に計算し続けなくては商業には使えないため、常に安定した膨大な演算処理を行う必要がある。

6カ月ごとにCPU(集中演算処理装置)の処理能力は2乗になるという「ムーアの法則」はあまりにも有名であるが、その法則に則り、演算処理能力は近年、短期間で急激に進化を遂げてきたために、ようやく「ベイズの定理」が陽の目を見ることができたのである。


ここで、「ベイズの定理」を少しおさらい。

「ベイズの定理」とは、新しいデータを取得するたびに、過去実績から算出した事象発生確率を更新していくものである。

コインを高く投げて、裏が出るか、表が出るかを推計する場合、10回までのデータから表が出る確率p(10)だった際、11回目のデータはp(10)をベースに、p(11)という新しい発生確率にアップデートする。この作業を続けていくと、1000回目から1001回目の予測は、10回目から11回目よりも現実に近く、精度が高いことは直感的に想像できるだろう。

この発生確率を常にアップデートし続けるということが、「ベイズ統計学」の要であり、演算処理をし続けなければならない理由でもある。


この例えは、きわめてシンプルなコインの裏表の発生確率だったが、Amazonのように数百万以上の商品を扱うプラットフォームでは、商品Aが売れた次に売れやすい商品Xをあぶり出していく演算処理は想像するだけで絶望的である。。。

しかし、ひとたび軌道に乗れば、強い武器となるため、圧倒的なデータ量がものを言うし、レコメンデーションでAmazonの右に出るものはいないと言われる所以だろう。

これだけ優秀な定理だと、すべての分析作業を「ベイズの定理」に乗せれば精度が上がっていくのではないだろうかと素朴な疑問が出てくるが、すべての事象に対して万能的に応用できる魔法のような方程式が無いのと同じで、「ベイズの定理」にも向き・不向きというものが必ず存在するため、状況に応じての使い分けが必要となる。

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