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  • Naoharu Motomura

慢性的な人材不足の仮説

最終更新: 2019年7月23日

前回のコラムでは慢性的な人材不足に対する事実を取り上げたが、本コラムではこの現象を解明を3つのポイントから解明していく。

  1. 労働人口が増える前から、すでに人材不足が蔓延していた

  2. 企業に属するよりも、起業の道を選ぶ比率が増えた

  3. 人材に十分と感じることは、そもそもない

1. 労働人口が増える前から、すでに人材不足が蔓延していた

近年になり、女性の社会進出が当たり前になってきたことから、当時は人材不足であったことは難なく想像できる。しかし、今ほど交通インフラ・ITインフラが整っていない1990年代は今みたいな長時間労働の比率はかなり小さいと考えられる。そのため、当時は労働時間を伸ばすことによる人材不足をカバーすることが難しいため、シンプルに同時並行で業務を行う人材が物理的に必要だったと言える。現在は、ノートパソコンの普及や深夜過ぎの交通インフラが整っており、労働時間を伸ばすことで、人材不足をカバーする手立てはあるが、それでもカバーしきれずに、人材不足と感じているため、当時とは事情が異なる。同じ人材不足は時系列的に根深く存在しているが、意味合いが変わってきているため、2000年代のどこかで人材不足のパラダイムシフトで起きた可能性がある。根本的には同じ課題であるが、本質的には少々異なるため、本書では過去からの遺産ではないと捉える。また、後述の議論の延長線上にもなるが、このサイクルはイタチごっことなり得うる可能性が極めて高いのである。結論を急ぐと、労働時間が長くなったため、人材を十分に確保できたとしても、ビジネスが進めば、またデキる人が犠牲となって、労働時間が長くなっていくという具合である



2. 企業に属するよりも、起業の道を選ぶ比率が増えた

終身雇用制度が崩壊に伴い、もっともらしく聞こえる。

起業する際は、将来的な人材確保はあまり気にならない。むしろ、起業早々から未来の従業員確保に頭を抱えている起業家は、かなり順風満帆だと思う。大半が人材確保は二の次にしたうえで、とりあえず起業したけど、企業規模が大きくなるにつれて人材確保が悩みの種になった、という会社が続出した際は、ポイント2の現象がもっとも濃厚と言える。

しかし、、、

経済産業省が公開する最新データが2016年と少々古く、過去データとの組み合わせからの推計になるが、2014年と比較しても中小企業・小規模事業者数は微減。

中でも小規模事業者数は大きく低下しており、リーマンショック以前のに傾向も企業数は右肩下がり傾向にあるため、この線は見込みが薄い。ただし、法人化せずに、個人事業主が爆発的に増加した場合は影響を大きく受けるが、個人事業主も受注してくれる企業の数に連動すると考えられるため、やはりこの線は弱いと言える



3. 人材に十分と感じることは、そもそもない

ポイント③のみ心理的要素で、ポイント①~②と分析軸が異なってしまい、並列では語れないが、やはり人間の欲には歯止めがかからないもの。

例えば現在、ミシュランで3つ星を取得している敏腕シェフも、決して現状に飽き足らず、更においしい一皿のために日々試行錯誤されていると思われる。

ただし、うまさの最高到達点はどこにあるのだろうか?

味覚は人それぞれ違うため、万人に対しての最高到達点は無いとして自分の感覚上、どんな料理を味わったらこれ以上ない100点と感じるのだろうか?これは、ウィスキーの国際品評会の最高点数が未だかつて100点をたたき出したウィスキーが存在しないことと通じる。

おそらくだが、100点というものは存在しない。


もしくは、存在し得れない、といったほうが正確である。仮に今、目の前に100点の料理があり、幸運にも味わうことができた場合、100点を経験したことにより、自分の感性がおのずと磨かれてしまう。そうすると、これ以上の感動をいつか味わいたいとなる。そう、無限ループが始まるため、満点のものはその場に存在し続けることができないのである。


これは、仕事においても同じことが言える。

広告代理店やコンサルタントの方々には分かりやすいと思うが、チームで考え抜いたプレゼンテーション。プレゼンテーションした直後は、終わった解放感と高揚感からかなりの高得点を付けたくなるはずだ。しかも、通常、業務と並行して時間が限られる中で作成した場合は尚更だ。しかし、時間が無限にあったと仮定しても、このプレゼンテーションを100点にすることはできるのだろうか?

答えは「No」だ。

評価者は先ほどの食事をいただく立場と変わらない。そんな彼らに100点を提供することは不可能なのだ。これまで少々、極端な議論を進めているが、これは「リソース問題」にも当てはまる。自己評価で80点行けば、人材に不安が無いという閾値を設定しよう。自分が置かれている立場が、75点とする。もうすぐだ。もうちょっと人材を確保すれば、少なくとも不安は無くなる。頑張ろう。76点、77点、78点と徐々に近づいているが、一向に不安感が払しょくされる感じがしないではないだろうか?

79点と、80点に天と地の差があった際、79.9点の時はどうなるだろうか?

79.9999点の時は、、、?

これは「点」の大きさという数学的問題と同義と言える。80点を示す点が大きければ、79.9点も満足に入るが、80点を示す点に大きさが存在しない場合、私たちが目指す、希望の80点はどこにあるのだろう、、、?



少々遠回りをして、心理的要素の問題から数学問題へと発展させてきたが、要はリソース不足も気の持ちようである程度はコントロールできつつも、及第点に達することは極めて稀である、ということを念頭に置いておくことが人材不足の課題解決に向けた重要な一歩と言えるだろう。


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