- Naoharu Motomura
デジタルマーケッターの罠
デジタルシフトという言葉すら時代遅れの昨今、デジタルを抜きにしてはマーケティングは語れない時勢の中、デジタルマーケッターという職種が近年、最も勢いのある1つと言っても過言はないだろう。
かくいう私も仕事の大半をデジタル関連に費やしているが、デジタルマーケッターと名乗ることに少々、抵抗がある。
それは、デジタル抜きにマーケティングが語れないのであれば、わざわざ「デジタル」という枕言葉を付ける必要がないからだ。
もう1つの理由は、デジタルマーケッターという人種は少々、「無機質」の印象が強いことが挙げられる。
数字を使いこなすことが、デジタルマーケッターの必要条件であるのだが、
数字で語ることのみに固執しているため、アウトプットに”心がこもってない”人が圧倒的に多い気がする。
そういった人種はえてして、説明が回りくどく何を言いたいのか分かりずらい。
アウトプットに心がこもっていない=自分ゴト化していないため、クライアントや上長に提案を押し通したい気持ちが弱いことが起因であろう。
科学的なアプローチが強く求められている中、心は特に重要ではないのでは?と思う人もいるかと思うが、説明に使用している数字は、どういった類のものであるか?ということを改めて考えていただきたい。
「計測可能な数字」。そして、そこから導き出される「予測可能な数字」
でないだろうか?
しかし、この「計測可能な数字」が少々厄介である。
さまざまな計測ツールが登場し始めており、収集できるデータは格段に向上しているが、計測不要な重要な指標がたぶんにあることを忘れてはいけない。
脳科学が劇的に進化していると言えど、まだ9割以上が解明されていない人間に対するデータや、
英国で自分たちの牛を管理するために耳に取り付けられたタグからかなり広域な意味を付加されるようになったブランドという資産が及ぼす様々な影響、
もっと身近なものを上げるのであれば、自社ブランドに関して友だちから見聞きした情報による影響など、例を挙げればいくらでも出てくるだろう。
これらの重要であるが、プランニング上に組み込むことが極めて困難な指標を抜きにした数的アプローチだけで十分なのだろうか?
これが「無機質」か否かを分けるターニングポイントだと感じる。
経験豊富な熟練マーケッターたちは、自身の”経験”をふんだんに盛り込んでいるため、
顧客が好みそうなスパイスをふんだんに取り込んでいることはもちろんのこと、
自身の口で伝えるのが上手であり、熱意も込められているから尚更、説得力がある。
自身が構築された数式モデルではなく、この”経験”の類を数字で表現してください、と質問したら困惑されるだろう。
クリエイターの領域にも当てはまるが、それらの数字が客観的な数字で表現できるようであれば、誰もが熟練マーケッターとなれる。
総論としては、パソコンの前でエクセル作業の延長上では、温かみのあるマーケッターへの道はない、ということである。
平日は終電近くまで業務、その反動で週末は家から出ないという人も多いと思うが、
少しでも”オフィスの外”で体験する機会を持っていただきたい。
もし、経営者やマネジメントの方で部下で思い当たる人種?!がいたら 携わる人たちの熱量が、数的予測を超えるための絶対条件であることを 是非、そういった機会を定期的に作っていただきたい。